新築時における大雨による水害対策と火災保険について解説
家づくりで意外と見落とされがちな「水害リスク」。近年増える集中豪雨に備え、ハザードマップの活用や基礎高・排水計画などの建築対策、火災保険の補償範囲を正しく理解することが大切です。土地選びからの予防で資産価値を守る住まいづくりを解説します。
家づくりにおいて、意外と見落とされがちなテーマが「水害リスク」です。
近年では、ゲリラ豪雨や線状降水帯といった集中豪雨の発生頻度が高まり、従来「安全」と思われていたエリアでも浸水被害が発生するケースが少なくありません。
今回は、そんな水害に関する対策としてどんなことが有効なのか?
そして火災保険でカバーできるのかどうか?などを解説していきます。
それでは、今回の記事のポイントです。
・新築時は建物性能だけでなく、洪水や内水氾濫リスクを考慮し、立地条件を正しく見極めることが欠かせない
・行政のハザードマップを参考にしつつ、周辺環境や地形を現地で確認し、机上の判断に頼らないことが被害回避につながります
・浸水リスクがある土地では、基礎の高さを上げる・排水計画を工夫するなど、計画段階から取り入れる対策が効果を発揮します
・火災保険で水害も補償されますが、床上浸水など条件付き。家財補償や特約を含め、内容を理解して加入することが重要
・不動産に強い住宅会社など、専門的な知識で水害リスクを確認することで、将来の損害を未然に防ぎ、安全と資産価値を両立した住まいが実現できる
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1. 新築時に考えるべき大雨・水害リスク
新築時は、建物の耐震性や間取りといった目に見える要素に注目が集まりがちですが、立地条件や災害リスクを見極めることも同じくらい重要です。
水害リスクには、主に以下のような種類があります。
・河川の氾濫による洪水被害
・排水能力を超えることで発生する内水氾濫
・周辺地盤の低さによる雨水の滞留
これらは、建物そのものの性能では完全に防ぎきれないケースも多く、立地の選び方や事前の備えが大きなポイントになります。
1-1. ハザードマップの重要性
水害リスクを把握する最も基本的な方法が、各自治体が公開している「ハザードマップ」の確認です。
ハザードマップは、過去の洪水実績や河川の氾濫シミュレーションをもとに作成されており、想定される浸水の深さや範囲が色分けされています。
ハザードマップを確認することで、例えば以下のような判断が可能になります。
想定浸水深が3m以上のエリアでは、1階部分が完全に水没するリスクがあるため、できるだけ避けた方がよいでしょう。
0.5m〜1m程度の浸水リスクがあるエリアでは、基礎の高さを上げるといった対策でカバーでき、土地の資産価値が維持されやすいです。
ただし、ハザードマップは「行政が想定した最大級の災害」を前提にしており、必ずしも実際の被害と一致するわけではありません。
また一方でハザードマップで危険エリアと出ていなくても、周辺環境や地形を現地でしっかり確認することが欠かせません。
2. 大雨・水害リスクへの有効な対策
仮に浸水の可能性がある土地であっても、建築や外構の工夫によって被害を軽減することは可能です。
①基礎の高さや排水計画を工夫する
まず最も基本となるのは敷地の高さ調整です。
浸水想定があるエリアでは、基礎高を通常のGL+300mm〜+600mm程度へ引き上げる、あるいは盛土によって宅地全体をかさ上げする方法があります。
ただし盛土の場合は、宅地周囲との境界部に擁壁や排水計画が必要となり、施工管理や費用面の調整が欠かせません。
また、道路より敷地が低い場合は雨水が集中しやすいため、外周に排水溝を設けたり、敷地勾配を道路側へ逃がす設計が求められます。
②下水の逆流防止策
集中豪雨時は下水管が逆流し、トイレや排水口から水があふれる被害も報告されています。逆流防止弁の設置が有効です。
こうした工夫は「建ててから」では難しいため、新築時の計画段階から取り入れることが肝心です。
また、万一に備えて家庭用ポンプや簡易的な止水板を準備しておくと、被害拡大を防げます。
3. 火災保険での適用範囲と注意点
火災保険という名前から「火事にしか使えないのでは?」と誤解されがちですが、実際には「自然災害全般に備える総合保険」としての性格を持っています。
特に水害に関しては、加入内容や地域リスクに応じて補償の範囲が大きく変わるため、新築時の検討が欠かせません。
また、水害補償については加入内容によって適用範囲が異なるため、注意が必要です。
一般的に水害で対象となる部分としては、台風や集中豪雨で床上浸水した場合、建物や家財の損害が補償対象になります。
建物補償:構造体(柱・屋根・壁・床)や内装設備(キッチン、浴室、配線など)
家財補償:家具・家電・衣類など、生活に必要な動産 |
補償の条件は、「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」が支払い条件とされているケースが多く、軽度の浸水では保険金が出ないこともあります。
つまり、庭や駐車場に水が溜まった程度では保険金は支払われず、建物内部や構造に実害が及んだ場合に対象となります。
この条件を理解せずに「水が入ったのに保険が下りない」と誤解されるケースが少なくありません。
保険会社の約款や条件などをしっかり照らし合わせ確認しましょう。
3-1. 保険料の違い
水害への対策に加入すると、その分保険料がアップします。
そして浸水リスクの高いエリアでは、火災保険料が割高になる場合があります。
火災保険料の基準は、国土交通省のハザードマップなどを元に保険料率が市区町村別に5段階に細分化されています。
これは損害保険料率算出機構が算出する参考純率に基づいています。
3-2. 家財補償の有無
建物だけでなく、付帯されている設備機器・家電・家具といった「家財」を補償対象にするかどうかも検討が必要です。
単に「水災補償」をつけるだけでは家財は補償されず、水害で家財が浸水・流されるなど一定以上の損害を受けた場合に、保険金が支払われます。
また、家財の保険価額の30%以上の損害を受けた場合に保険金が支払われるのが一般的になっており、お住まいの地域・ご自身が保有しているモノ・保険料とのバランスで必要性は総合的に判断しましょう。
火災保険は建物完成後に加入するものですが、土地探し・建築計画の段階でリスクを見極めておけば、後々の保険料や補償内容の選び方にも直結します。
3-3. 特約・付帯サービスの活用
火災保険には水害補償以外にも役立つ特約があります。
水濡れ特約:給排水設備の故障やマンション上階からの漏水などに対応
臨時費用補償:災害時に発生する追加費用(仮住まい費用など)を補償
残存物取片付け費用補償:浸水後の廃棄物撤去費用を補償
これらを組み合わせることで、実際の生活再建に直結する備えが可能になります。
4. プロが選ぶ土地の安心感
施主様が個人でハザードマップや現地調査を行うことは可能ですが、災害リスクを専門的に読み解くには経験と知識が欠かせません。
特に水害リスクは、地形や周辺インフラとの関係性も複雑に絡み合います。
道路と敷地の高低差や、周辺開発の影響、過去の土地利用状況からみる地盤特性など様々な観点からチェックが必要です。
土地を選ぶとき、「なんとなくこのあたりいい」「たまたま安い土地があった」というだけでなく、ハザードマップを中心に将来のリスクもしっかり確認しましょう。
特に不動産が強い住宅会社に任せることで「プロの視点」で土地を選定することで、施主様が気づきにくいリスクを事前に回避しやすくなります。
火災保険で守れるのは経済的損失までであり、家そのものは保険では元に戻りません。
そのため、立地選びの時点で水害対策も考えたプランニングが最も現実的かつ確実な備えと言えます。
5. まとめ
新築時における大雨・水害リスクは、建物そのものの性能だけでなく、「どこに建てるか」という土地選びに大きく左右されます。
ハザードマップの確認や基礎高・排水計画などの対策に加え、火災保険の補償内容を理解して備えることが大切です。
しかし、個人の判断だけで災害リスクを正しく評価するのは難しいのが現実です。
和光地所は、土地仕入れの段階からハザードマップや周辺調査を徹底し、「安心して暮らせる土地」を選び抜いています。
施主様が「知らなかったリスク」に後から悩まされることがないよう、プロの目でしっかり確認を行い、安全性と資産価値を両立できる住まいをご提案しています。
大切な住まいを長く安心して守るために、まずは土地選びから私たち和光地所にご相談ください。