外観の上手な設計方法と考え方。外壁の選び方のコツも
家の印象を大きく左右する「外観」に焦点をあてて特集。
本記事では、窓配置や玄関の見せ方、屋根・軒の整え方など、外観を上品に仕上げるための設計の基本を解説します。
さらに、外壁カラーの選び方や配色のコツも紹介し、失敗しない外観づくりをサポート。
今回は外観をおしゃれに、かっこよく見せるための設計方法と考え方をお伝えしていきます。
建築は、土地形状や接道(土地がどのように道路と面しているか)など、多種多様な条件のもと建てられます。
しかし、その中でも外観がオシャレに見せる家と、そうでない家があり、その違いの基本的なポイントをお伝えしていきます。
また、注文住宅の場合、外壁も自分で選ぶことになりますが、この選び方でも見え方は大きく変わります。
それでは、早速コラムの要点から見ていきましょう。
・どんな外観を目指すのか?によって設計方法は異なってきて、例えばシンプルモダンを目指すのであればファサードには窓がない方がスッキリした印象になる ・玄関ドアを直接見えないようになっているだけでも印象はよくなり、正面にきてしまう場合は半畳ほど凹ませたりすることで目立ちにくくできる ・屋根は形状だけでなく軒まわりも重要で、最近流行りのガルバリウム鋼板であれば、軒まわりをスッキリとした納めにできる ・外観を良くする一番の近道は、“注文しすぎないこと” 。 設計士に理想に近い外観を伝えて、ある程度おまかせした方が中の間取りとのバランスも取りやすくなる ・外壁は色の使い過ぎに注意。2色目も小さい面積に留めて広い範囲でツートンにしない方がおしゃれに仕上がりやすい |
1. 目指す外観イメージを定める

外観づくりは、「どんな印象の家にしたいのか」というゴール設定が大事です。
これは間取りと同時、もしくは中の間取りよりも先に考えるべき項目で、外観イメージが明確かどうかで、その後の設計方針が大きく変わってきます。
たとえば今人気のシンプルモダンを目指す場合、外観の正面(ファサード)に窓を多く設けないほうが、すっきりと洗練された印象になります。
凹凸を減らし、余計なラインをつくらないようにすることで、落ち着きのある品のいい外観に整えることができます。
一方、ナチュラル系やカフェ風の外観を目指す場合は、木目や植栽との相性を考えて、窓や素材の配置にリズムをつけると心地よい雰囲気が生まれます。
土地の条件が複雑な場合でも、この「外観の方向性」を明確にしておくことで、設計士は無駄のない判断ができ、不要な要望の追加を避けられます。
注文住宅は自由度が高い分、視覚的な要素を積み重ねすぎてしまうと、まとまりが失われやすくなります。
まずは“どんな佇まいにしたいか”を決め、その軸をブレさせないことが、おしゃれな外観づくりの第一歩です。
2. 窓配置と玄関の見せ方で整える

出典:思い描いた夢が現実に!好きを追求した塗り壁の家 施工写真
外観の印象を左右する最大の要素が「窓の配置」です。
同じ家でも、窓が並ぶ位置や大きさ、数が違うだけで、見え方は変わります。
外観を美しく見せたい場合は、ファサード(道路側)に種類の違う窓をいくつも並べないことが基本です。
大きさや形がバラバラになると、視線が散り、まとまりのない外観になりやすいからです。
採光や通風はもちろん大切ですが、それを正面側に集める必要はありません。
たとえば南側に道路がある土地でも、窓を正面に向けず、側面や裏側から光を取り込む設計も可能です。
今は高性能なサッシや採光手法が増えているため、外観デザインと室内環境を両立しやすくなっています。
2-1. 玄関の見せ方

また、外観の印象を大きく左右するもう一つのポイントが「玄関の見せ方」です。
玄関ドアが正面から丸見えだと、住宅感が強く出てしまい、落ち着かない印象になります。しかし、少し凹ませたり、袖壁を設けるだけで見え方は大きく改善します。
とくに半畳ほど玄関を奥に引っ込めるだけでも、陰影が生まれて高級感が出るメリットの他、プライバシー性も高まります。
窓と玄関、この2つを整えるだけで、外観は驚くほど洗練されます。
外観デザインに迷ったら、この章で紹介した「見せる・見せない」のコントロールを意識するとよいでしょう。
3. 屋根と軒まわりの設計で印象を洗練させる

出典:ご夫婦のこだわりの詰まったホテルライクな平屋 和光地所
屋根は家の「輪郭」をつくる重要な要素です。
特に最近は、ガルバリウム鋼板の屋根を採用する住宅が増えていますが、ガルバは素材としてスッキリとしたラインを作りやすく、軒まわりをシャープに見せることができます。
外観デザインとの相性も良く、シンプルモダン系の家ではとても有効です。
屋根の形状そのものよりも、外観の印象に大きく影響するのは「軒まわりの納まり」です。
軒の出が大きすぎると重く見え、小さすぎると無骨に見えてしまいます。
そのバランスは意外に繊細で、ガルバリウムの場合、軒を出さずに外壁と一直線に見せる軒無し仕様も可能で、ミニマルで落ち着いた表情をつくるのに向いています。
また、深い軒を出す設計も決して悪いわけではありません。
軒が深いと陰影が際立ち、和モダンな雰囲気や、存在感のある上質な外観になります。
重要なのは、外観イメージとの整合性を取り、窓や外壁のラインと矛盾が生じないようにすることです。
屋根・軒まわりは単なる機能ではなく、外観の印象を決める重要な要素です。
屋根の形状だけでなく、そのまわりの仕上げや見付けをどう見せるかまで考えることで、より完成度の高い外観が生まれます。
4. 外観づくりの近道は“注文しすぎない”こと

意外に思われるかもしれませんが、外観を美しく仕上げるための最短ルートは「注文しすぎないこと」です。
注文住宅では、希望をすべて形にしようとすると外観に情報が多くなり、結果として統一感が失われてしまいます。
例えば「窓は大きくしたい」「ここにも採光を」「収納をここに追加したい」などの要望が積み重なると、窓の高さがずれたり、外壁に凹凸が増えたりしがちです。
そうなると、いくら素材や色にこだわっても、全体としては雑然とした印象になってしまいます。
設計士はプロとして、間取りと外観のバランスを常に見ています。
外観を崩さず、生活に必要な機能も満たすための調整は、お施主様の「やりたいこと」を一度すべて叶えようとするよりも、むしろ“任せる”方がうまくいくケースが多いです。
とくに外観デザインは、わずかなズレでも印象に影響するため、全体のバランスを保つには、細かな調整は設計士に任せる方が、洗練された家づくりになりやすいでしょう。
5. 外壁カラーは色数を抑えよう

出典:アイランドキッチンを中心とした家事動線&収納たっぷりの家
外壁選びで最も多い失敗が「色数を増やしすぎること」です。
外観のまとまりをつくるうえで、外壁カラーは非常に重要な要素ですが、色を4色以上使うと一気に雑然として見えやすくなります。
基本は 1〜2色、多くても3色に抑えることで、シンプルでありながら上品な外観に仕上がります。
ツートンにする場合も、広い面積を分断するような色の切り替えは避け、部分的にアクセントとなるような張り分けがおすすめです。
例えば、玄関まわりのアクセントに使う程度であれば、控えめで上質な印象にまとまります。
6. まとめ

外観デザインは、派手な装飾ではなく「引き算」で整えるものです。
目指す外観イメージを明確にし、窓や玄関の見せ方を整え、屋根と軒のバランスに気を配る。
そして最後に外壁カラーを丁寧に選ぶ。これらの積み重ねによって、初めて上品で洗練された外観が完成します。
大切なのは、家全体の統一感と、暮らしやすさとの両立。
見た目だけを優先せず、設計士と対話しながら、無理のない美しさを追求する姿勢が、長く愛される家づくりへとつながります。
